
製造業の資金繰りに悩む経営者の方は多いのではないでしょうか。
- 「受注はあるのに、どうしてこんなに手元資金が足りないのか……」
- 「銀行から追加の融資を受けるのが難しくなってきた」
そんな声を、私は元大手銀行の融資審査部門に在籍していた頃から数多く耳にしてきました。
実は、製造業特有の資金繰り課題にはいくつかの共通パターンが存在します。
当時、融資審査担当として2,000社もの決算書や事業内容を拝見した経験から言えるのは、多くの企業が「同じ落とし穴」にはまっているということ。
今回は、金融のプロの視点から、製造業の資金繰りが厳しくなる5つの盲点を解説しながら、今すぐ取り組める具体策をお伝えします。
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製造業の多くが資金繰りに苦しむ5つの理由とは?

製造業は他の業種と比べても、資金の流れが複雑になりやすい傾向があります。
売上が好調でも、支払いのタイミングやコスト管理の問題が重なると、資金繰りが厳しくなることも少なくありません。
ここでは製造業の資金繰りが厳しくなる主な理由を5つご紹介します。
01 | 設備投資の「返済原資」を軽視している
設備の導入はゴールではなくスタート
製造業で資金繰りが苦しくなる代表的な原因の一つは、大きな設備投資です。
新しい機械の導入や工場の拡張は、「生産効率が上がるから大丈夫」と考えられがち。
しかし、導入後すぐに売上が大幅に伸びるとは限らないのが実態です。
銀行の融資審査では、設備投資計画における「返済原資」がどう生み出されるかを厳しくチェックします。
将来キャッシュフローを見積もる際に楽観的すぎる試算をしてしまうと、実際には返済が厳しくなり、資金繰りを圧迫する原因となります。
対策のポイント
- 慎重な投資計画
導入初期は売上増よりもコスト先行になりやすいと想定する。 - 複数のシナリオを想定
最良ケースだけでなく、受注が伸び悩むシナリオも立てて返済計画を練る。 - 返済シミュレーション
借入を検討する際は、金利上昇リスクや回収サイトの遅延リスクも織り込む。
02 | 受注増に伴う「運転資金の増大」を見落としている
売上が増えても手元現金は減る?
「受注が増えたのに、なぜか資金が苦しい」という声は、製造業では珍しくありません。
これは、受注増に伴う原材料費の先行支出や人件費のかさみ、さらに売掛債権の増加が重なることによるものです。
製品を作るほど、先にコストが出ていくのが製造業の宿命とも言えます。
銀行の審査担当者として驚くのは、受注が順調な企業ほど運転資金需要を正確に把握していないケースが多いこと。
売上が伸びると喜んでいる間に、資金がショートしそうになってから慌てて追加融資を申し込む企業も少なくありません。
対策のポイント
- 運転資金シミュレーション
- 月次ベースで「仕入れ→在庫→売掛→回収」のサイクルを数値化し、数か月先までの資金繰り表を作成する。
- 月次ベースで「仕入れ→在庫→売掛→回収」のサイクルを数値化し、数か月先までの資金繰り表を作成する。
- 銀行融資を軸に据えた運転資金確保
- 基本的には銀行からの短期融資(当座貸越・手形貸付・手形割引など)をベースに、必要に応じて長期資金も組み合わせるのがおすすめです。
- 最良の方法としては、当座貸越の極度枠を設定してもらうことが挙げられます。
ただし設定にはハードルがあるため、専門家のサポートを受けることで交渉の難易度を下げられる可能性があります。
- 基本的には銀行からの短期融資(当座貸越・手形貸付・手形割引など)をベースに、必要に応じて長期資金も組み合わせるのがおすすめです。
- ファクタリングやABLは慎重に判断
- 売掛金を早期に資金化できるファクタリングや、在庫を担保としたABLも手段としては存在しますが、手数料負担や担保評価の煩雑さ等があり、安易に利用するとコストがかさむリスクも。
- 銀行融資との比較検討の上で、どうしても必要な場合に限り活用を検討するとよいでしょう。
関連記事: 融資の運転資金とは?必要な資金の計算方法と調達手段を徹底解説
03 | 原価計算のズレが収益構造を歪ませる
「とりあえず受注」こそ危険
製造業の場合、原価計算が複雑です。
特に多品種少量生産やカスタムメイド品を扱う企業では、実際のコストと見積もりコストにズレが生じやすくなります。
「受注が来たらとりあえず断れない」という経営者も多いですが、利益が出ると思っていた案件が蓋を開けてみたら赤字だった……というケースも散見されます。
銀行の審査担当は、粗利率や売上総利益の推移を厳しくチェックします。
受注増加がそのまま利益増になるとは限らない以上、原価管理の精度が低いと企業評価にもマイナスになりかねません。
対策のポイント
- クラウド型原価管理システムの導入
人件費や間接費を含めて正確に見積もり、都度実績と比較して差異を分析する。 - “価格交渉力”を意識
適正な原価と利益を確保するため、顧客と交渉しやすい仕組み(付加価値の見える化など)を整備する。
04 | 銀行からの評価を「決算書の数字」だけで受けてしまう
本来は事業性評価も受けられるのに…
「銀行は結果だけを見る」「赤字決算では相手にされない」
――こうした先入観が根強く、中小の製造業ほど事業性評価をうまく活用できていない印象があります。
実は近年、金融庁の方針や地域金融の取り組みにより、“決算書だけでは測れない事業の強み”を評価する融資手法が広がりつつあります。
つまり、製品の技術力や将来の市場性なども加味して融資を判断する動きがあるのです。
しかし、そのためには自社の技術力やビジネスモデルをきちんと数値や資料で説明できる体制が必要です。
銀行担当者が「この企業なら将来性がある」と納得できるような情報開示を行わないと、結果的に数字頼みの審査になり、融資が下りにくくなってしまいます。
対策のポイント
- 見せ方を整える
自社の強みを「技術力」「販売チャネル」「特許・知的財産」など、客観的な資料としてまとめる。 - 事業計画書のブラッシュアップ
将来の事業拡大や設備投資の計画を具体的に記載し、返済原資の根拠を示す。
関連記事: 赤字決算でも資金調達は可能?赤字でも資金調達する方法!
関連記事: 【融資で5000万円調達したい!】大口融資調達のプロが確実に資金調達を成功させるポイントを伝授!
05 | 「自己資金」と「信用保証」に過剰依存してしまう
余裕資金をすべて投資に回す危険
中小製造業では、自己資金をフル投入したうえで、追加が必要になれば信用保証協会付き融資を利用するというパターンをよく見かけますです。
しかし、自己資金を投入しすぎてしまうと、いざというときの資金が枯渇しやすくなり、また信用保証だけに依存していると融資枠が限界に達した途端に追加の調達が困難になります。
私が審査を担当していたときにも、「自己資金があるから大丈夫」と思って投資を進めた結果、追加設備や運転資金が不足して手詰まりになるケースを何度も見てきました。
銀行としては、キャッシュリザーブ(手元に残しておく資金)をある程度持ち、柔軟に対応できる体質かどうかを高く評価します。
対策のポイント
- キャッシュリザーブの確保
設備投資をする際は、自己資金の一部をあえて温存する計画を立てる。 - 複数の資金調達手段を組み合わせる
信用保証協会だけでなく、プロパー融資を打診したり、ファクタリング・ABL・補助金・助成金なども並行して検討する。
関連記事: プロパー融資とは?銀行からの融資の種類とプロパー融資のメリット・デメリットについて!
プロが教える!製造業が今すぐ取り組むべき資金繰り改善策3選

上記の5つの理由を踏まえ、さらに実務ですぐに活用できる資金繰り改善策を3つご紹介します。
これらは銀行の審査部門出身だからこそ見えてきた、「ここを押さえれば融資も受けやすくなる」要点でもあります。
01 | 月次資金繰り表とシミュレーションの徹底
- 受注・売掛金・在庫・仕入れなどの推移を月単位で整理し、資金の出入りを可視化。
- 資金繰り表があると追加融資の相談時にも銀行からの評価が高まる。
- 短期・中期の複数シナリオで試算して、「最悪の場合」でも資金が回るかを確認。
02 | 在庫管理の精度を高めてキャッシュを捻出
- 過剰在庫やデッドストックが資金を寝かせる最大の原因。
- 在庫回転率を管理し、適正水準を保つことでキャッシュフローを改善。
- 動きが悪い在庫は値下げやセット販売などで早期に現金化。
03 | 補助金・助成金と融資を組み合わせる
- 製造業向けの設備投資補助金や研究開発補助金などを活用すれば、融資額を抑えられる。
- 補助金は返済不要なのでリスクが軽減され、銀行融資でもプラスの要素として評価される。
- 申請には時間と手間がかかるため、早めの情報収集と計画が大切。
製造業が活用できる資金調達の種類

ここまで資金繰りの盲点や改善策を中心にお伝えしてきましたが、いざ資金を確保するとなると「どの調達手段が一番いいの?」と迷われる方も多いでしょう。
製造業の方が検討しやすい代表的な資金調達方法を、ここで一通り整理してみます。
01 | 銀行融資(プロパー融資・信用保証付き融資)
- メリット
- 長期借入や大口の借入が比較的しやすい。
- 低金利での借入が可能(信用保証付きの場合は特に)。
- デメリット
- 審査が厳しく、実行まで時間がかかる。
- 決算書の数字が悪いと断られる可能性も高い。
02 | ファクタリング
- メリット
- 売掛金を早期に現金化できるため、キャッシュフロー改善が即効性を持つ。
- 担保や保証人なしでも利用できるケースが多い。
- デメリット
- 手数料が発生するため、資金コストが上乗せされる。
- 信用度の低い取引先の売掛金は買い取ってもらいにくい。
03 | ABL(Asset Based Lending)(動産・債権担保融資)
- メリット
- 在庫や売掛金を担保とするため、不動産担保がなくても利用可能。
- 通常の銀行融資に比べ審査が柔軟なことが多い。
- デメリット
- 評価額(在庫価値や売掛債権の信用度)によって融資額が左右されやすい。
- 定期的に在庫調査やモニタリングが入る場合がある。
04 | リース・割賦(設備導入時)
- メリット
- 設備投資の際、初期費用を抑えつつ導入可能。
- リース料が経費計上され、会計上のメリットがある場合も。
- デメリット
- リース期間中は解約しづらい。
- 長期的には支払総額が購入より高くなるケースが多い。
05 | 補助金・助成金
- メリット
- 返済不要の資金なので、キャッシュフローを圧迫しない。
- 銀行融資の信用力アップにつながる場合がある。
- デメリット
- 申請が複雑で、採択結果が出るまで時間がかかる。
- 設備投資資金等を一旦立替えて支払う必要があるため、資金繰りを圧迫する可能性。
- 必ず採択されるわけではなく、不採択リスクがある。
関連記事: 福岡で資金調達コンサルタントをお探しの方必見|大口融資調達サポートが銀行交渉を徹底サポート!
【まとめ】製造業の資金繰りに関することなら、お気軽に大口融資調達サポートへご相談ください!

今回は「製造業の多くが資金繰りに苦しむ5つの理由」と「元銀行審査担当が明かす実態と今からできる対策」について解説しました。
製造業は設備投資や在庫・売掛金管理など、多くの側面から資金が動く複雑な業態です。
だからこそ、銀行の融資審査部門の視点を取り入れれば、安易な資金ショートを防ぎ、より有利な条件で融資を受ける土台を作ることができます。
- 設備投資の返済原資を甘く見積もらない
- 受注増でも運転資金が先行する構造を理解する
- 原価管理の精度を高めて粗利率を確保する
- 決算書の数字だけでなく事業性評価を勝ち取る
- 複数の資金調達手段を組み合わせ、キャッシュリザーブを守る
「大口融資調達サポート」では、銀行の内部事情に精通したプロが、製造業向けに特化した資金繰りサポートを行っています。
- 自社の資金繰りがどこに問題があるのか
- 新しい設備投資をする場合、どのタイミングでどれだけ借入するべきか
- 補助金や助成金を組み合わせてどれだけリスクを減らせるのか
「大口融資調達サポート」では、こういった疑問に銀行内情を知り尽くしたプロが、製造業向けに特化した融資サポートを行っています。
キャッシュフローが安定すれば、より攻めの経営にも乗り出しやすくなります。
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